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棺桶の蓋が開く時
どうやら俺は、あと数年で死ぬらしい。医者がとても気の毒そうな顔で宣告してきた。ある日突然、元気であるにも関わらず倒れて死ぬ。それが俺の病気であるという。
それを聴いて俺が最初に思ったのは、“それは非常に困る”だった。
何故なら俺には家族がいる。妻に、可愛い可愛い十歳の一人息子。このままでは息子が大人になるのを見届けられないではないか。
すると医者は、ある最先端技術を紹介してくれた。それはコールドスリープと呼ばれる、一種の一方通行のタイムマシンである。
「この中で眠ると、十年後に目覚めるってわけか」
「そうです。十年の間は病気も進行しません」
「そりゃあいい!息子が大人になる時まで、生き延びられるってことじゃないか!買うぞ!」
卵型の装置はとても高価だったが、俺は借金をして購入することに決めた。妻は“危ないからやめてほしい”と心配してくれたが――俺の心は変わらなかったのである。
「スズネ、お前の心配は嬉しい。でも俺は決めたんだ」
「あなた……」
「じゃあ、十年後にな。それまでタクヤを頼むぞ」
俺は息子を妻に任せ、装置の中で眠りについたのである。最後に見たのは泣きそうな妻の顔と、心配そうな息子、タクヤの顔だ。
――十年後の君よ。どうか立派に成長した姿を、父さんに見せておくれ……!
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