黒い箱

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その日、故郷で小学校の同窓会を行うことになった。 実は二度目。 一度目はちょうど成人式のあと、中学卒業と同時に散り散りになった友との再会に喜んだ。 中にはすでに交通事故で亡くなった友もいて、全員が揃うことはなかったが……。 それから二年経って、また同窓会の知らせが届いた。 正直、故郷まで電車で数時間かかる事もあって悩んだ。 だが、タイムカプセルを掘り返すということで、恥さらしにならないように参加を決めた。 タイムカプセルを埋めたのは小学校の裏山。 待ち合わせは小学校の校門の前。 そこで知った、恩師の死。 そして、この二年の間に二人の同級生が事故で亡くなり、一人が病気療養中にて不参加だった。 立ち続けの訃報に、周りの奴らも少し気味悪がっていた。 とにかく、日が暮れるまでにタイムカプセルを掘り出そう。 シャベルを持ったカツヒサを先頭に裏山に向かった。 校舎からわりと近くにあった大きな木の下。 そこに事前に置いたとみられる目印があった。 カツヒサが土を掘り返すと、懐かしき箱が顔を出した。 中を開けると水没もしておらず、綺麗な状態であったことにみんなは喜んだ。 それぞれの思い出の品を返却し、俺は片腕のない戦隊ものの人形を受け取った。 背中には、母が書いたとみられる俺の名前があった。 片腕は、買ってすぐに失くしたことを思い出していた。 ふと、タイムカプセルの一番下に黒い箱を見つけた。 カツヒサは黒い箱を手に取り側面を見た途端、顔が強張った。 そこには「マサル」と書かれていた。 マサルはいじめられっ子だった。 家がかなりの貧乏で、毎日同じ服を着ていた。 近くを通ると下水のようなにおいがして、みんなから嫌がられ無視をされていた。 一部の男子からは暴言や暴力を受けていた。 そんなマサルがタイムカプセルを埋めた後、裏山で首を吊って自殺したのだった。 その事を思い出し、朗らかな空気が一瞬で重苦しくなった。 すでにマサルはこの世にいない。 俺は黒い箱の中身が気になり、カツヒサに開けるように言った。 鍵はかかっていなかった。 黒い箱の中には何枚もの人の形をした紙が入っていて、その一枚一枚に表には名前、裏には日付が書かれていた。 ある女子が、その中の一枚を見て息を飲んだ。 同級生の名前の裏に書かれた日付は、事故で亡くなったその日だった。 紙人形はクラス全員分あった。 日付は全てバラバラ。 俺の紙人形もあった。 日付は、タイムカプセルを埋めた10年後。 残りあと半年。
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