ワタシ会議

3/4
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「ごめんなさい、言い訳はしないわ。遅刻は遅刻だもの」 『私』は笑みを浮かべたまま、言葉だけは真摯に謝る。  それに『私』がさらに眉をしかめた。  そんな10年前の『私』に向かって10年後の『私』は娘を慈しむような目を向ける。 「でも、それだけでカリカリしてちゃ、人生楽しめないわよ?」 「は? 遅刻した上に言い訳するつもりですか!?」 「いいえ、私の経験談」  そう答える『私』の表情に、いぶかしげに『私』が眉をひそめる。  昔の『私』でも分かったのだろう。 『私』の笑みに、何かやるせないものが混じったことに。 「そうやって私が取りこぼしてしまったものを、あなたには取りこぼしてほしくないのよね」  その言葉に、『私』は少し面食らい、そしてちょっと恐れを抱いたようだった。  そんな過去の『私』に未来の『私』は微笑ましいものを見るような視線を向ける。 「でも、あなたのおかげで思い出せたこともあったわ、ありがとう」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!