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TF:久慈珠希(初等部)
僕が久慈珠希に出会ったのは白樺学園初等部の頃だった。
珍しく空也が対等に話している人間がいたので驚いたけど、僕以外にもいるんだと知って、何故か胸がちくちくした。
久慈珠希は、温厚で、世話好き、容姿も非常に整っていて、空也と並ぶと絵になるのは確かだ。
珠希は空也とは違い誰とでも普通に話すので、僕に対しても優しかった。
僕は空也の相棒として選ばれたので、いつも側についていて、珠希と三人で過ごすことが多くなった。
「なぁ、珠希、キスしようよ」
「あはは、何言ってるの、空也」
ちょ、ちょっと待って。
「だって挨拶みたいなもんじゃん」
「じゃあ今更挨拶しなくてもいいんじゃない? 」
ちょちょちょ、ちょっと待って、空也、僕は!?
「ほら、優哉が驚いてすごい顔してるよ」
「あはは、ほんとだ、優哉、おもしれー! 」
か、からかわれたのか…。
僕はからかわれたのか、空也に。
悔しくて、涙が出そうになったのでかっこ悪いと思い、その場から走り出した。
少し離れたところで涙をこぼしていると、ぽんと肩を誰かが叩いた。
「ごめーん、優哉ぁ、機嫌直して」
…しるか、空也なんて。
「ね? 」
くるっと振り向かされると、ちゅっとおでこに柔らかい感触が当たった。
「ごめんねのちゅー。挨拶だろ? 」
そう言って笑って、空也が戻っていったので、僕も後を追った。
そして珠希を見て思った。この時点では僕が有利。
…?
何が有利? 友達として仲良しってこと?
そんなことはこの歳の僕がいくら教養知識を身に付けていても難解な感情についてはわからなかったよ。
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