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紫堂空也(中等部)
僕たちの学校は、中等部から全寮制で、もちろん僕も空也も珠希も、寮に入ることになった。
僕はひそかに空也と同じ部屋にならないかな、と思っていたけど、空也は珠希と同じ部屋だった。僕と同じ部屋には妹尾理一(せのおりいち)という、女の子みたいな顔で、身体も小さな子が一緒に暮らすことになった。
空也の側にいるようになってから数年、僕は完全に人のいい笑顔を身につけ、6年生になってからぐんぐん身長も伸びはじめた。
僕はある日突然、空也から色気がでてきたのを知った。空也は高等部の先輩にも評判で可愛がられていた。
「優哉ー、泊めて」
「いやです。自分の部屋に戻ればいいでしょう」
「ダメだって、こんな時間だし、珠希に気づかれちゃう」
空也は誰かに抱かれた日は必ず僕に電話して泊めろと言った。僕は本当に嫌で仕方なかったけど、結局空也にいつも押しきられて泊めることになっていた。
「どうして珠希に気づかれたくないんだ」
「だって、珠希は嫌がりそうだから。僕がこんな誰とでも寝ちゃうような奴だって知ったら」
…珠希も鈍くないんだからもう知ってると思うし、それを空也も気づいているくせに。
「随分珠希のこと気に入ってるよね」
空也はすこし頬を赤らめて、照れたように笑った。そんな表情、するんだ…。
「そりゃあ、初めてできた友達だから」
「…友達。本当は珠希のこと、好きなんじゃないの? 」
「何言ってんだ。僕は珠希に抱かれたいなんて思ったこと一度もないよ」
空也は呆れたようにため息をついた。
じゃあ、僕は?
「…僕も空也の友達? 」
「当然だろ」
何を今更、とでも言いたげな顔で空也が笑った。
じゃあなんで珠希には気づかれたくなくて、僕にはいいんだ。
僕は空也がはじめて誰かに抱かれた日から、気がついていた。僕は空也のことが好きだ、ということに。
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