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不安げな表情で、何かを探すように辺りを見渡していたマコトが、不意に声を上げた。
「たまぁー!たまぁーごーーー!」優しい声で、呼び掛ける声は、まるで迷子になったペットを捜すかのようだった。
暫くして、森の下草が微かに揺れた。
「ニャーーン」
風鈴の音色のような、涼やかな猫の鳴き声が聞こえて、真っ白な猫が姿を表した。
「良かった。生きていた……」
安堵の溜め息をつきながら、マコトが目尻を下げた。
「おいで!」マコトが白い猫を呼んだが、猫はマコトまで三メートル程の距離で立ち止まり、警戒するようにマコトを見つめていた。
マコトはボディバッグから、ステンレス製の小皿と猫用ドライフードを取り出して、猫と自分の中間地点へと置いた。
待ちかねたようにドライフードに飛び付く猫を、じっくりと観察した。
成猫ではないが、子猫と言う大きさではない。
三キロ程度だろうか?体重から察すると生後半年と言ったところだろう。
ソマリに似た長毛種の猫。白い毛並みだが白猫ではない。
真っ赤な瞳が、その証だった。
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