このことは 夫には内緒

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あのね。口に出しては言わないけれど。 ママ時々不安になるんだよね。 ママの全然知らない子の名前や土地の名が飛び出してくるときとか。 ママが聞いたこともないような知識を当たり前のように語るときとか。 日々成長するあなたを見ているのはとても楽しいのだけれど、ある日突然私から離れていってしまうんじゃないかって。それは勿論どこか遠くにいってしまう、とかいう物理的な意味ではなくて。 え、っと。えーと。こうもっと精神的な?え、でも大学とかに行くようになれば勿論距離も、あれ?こんがらがってきた。 うーん、だから……あああだめだ、私こういうのって苦手なのよ、難しいこと考えると頭の中混乱しちゃって収拾がつかなくなる。 そしたらまたカイにからかわれるのよ。頭ナデナデしながら『いくつになったら独り立ちできるの?』って。 もうやだなあ、二人の子持ちなのに未だに子ども扱いされるのってどうなんだろ。 「ママ、なに笑ってんの?」 「え?わらっ……コホン。別に。」 あ、たっくんの目が冷たい。そういうところパパにそっくり。 ……いやいや今はそれよりも目の前の雑草。今日はチューリップの球根も掘り上げないといけないんだから。 「さあ花壇の雑草、片づけちゃうよ。」 まずはこのカラスノエンドウね。これは本当に厄介。 マメ科だから花も葉っぱも可愛いんだけど。エンドウ豆に似た実のなる様も可愛いんだけど。 このミニチュアエンドウは黒く熟れるととんでもなく種を飛ばすんだよね。気を抜くと庭のあちこちにカラスノエンドウが生えてくる。見つけ次第引っこ抜かないとまた来年しんどい目に遭う。 「ねえママ。あのさ」 「んー?」 「ミズキのことなんだけど。」 「んー。ミズキちゃんね。どうかした?」 たっくんの手が器用にカタバミの根っこを土から引きずり出している。 「あんまり喋れないんだよね。」
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