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「……どういうことかな?」
たっくんの引っ張り出した根は軽く三十センチはありそうなのにまだその先は土の中。
「話しかけてもさ。そっけないというか。」
そっけない?ミズキちゃんは誰とでもすぐに仲良くなる姉御肌の女の子だよ?特にたっくんとは仲良し中の仲良しでしょ?
「昨日なんか……」
「昨日?ああスイミングの時かな?」
たっくんもミズキちゃんも同じ時間にスイミングスクールに行ってる。というかこのあたりの子はみんな同じ所に行ってるんだけど。
「ミズキ、クロール25メートル泳げたんだよ。」
「すごい!頑張ったんだね。」
「そうなんだ。だからおめでとう、って言いたかったのに...逃げられちゃった。」
逃げられた?
「何かいたずらしたの?怒らせるような」
「するわけないじゃん。だって僕はミズキが……」
「ミズキちゃんが?」
いつもはホントに私の子供?っていうくらいはっきりくっきり話すたっくんがえらく口ごもってる。
ああ、そっか。男の子には言いにくい言葉だよね。
「大好きだから?」
「す、す、ちょ、ママ……なんで?」
「知ってるよそんなこと。今更じゃんねー。」
「な...ママ...い、今更って...今まで知らんぷりして...」
「落ち着きなさい、たっくん。ミズキちゃんだってたっくんのこと好きだよ。それはママが証明する。」
あれ?
どうしてママに背を向けるの?
しかも首がどんどん赤くなってたっくんの金髪まで赤く染まりそうな勢いなんだけど。
だってパパとミズキちゃんのパパは大の親友……悪友、かな。あなた達が産まれる前から家族ぐるみのお付き合いをしてるからよーく分かってる。
「生まれた時から双子みたいに育ってきたあなた達だよ。
お風呂一緒に入ったりおんなじお布団で寝たり、お互いほくろの場所まで知ってるくらいの仲なんだもの。理由もなく嫌いになることなんかないよ。
きっと何か事情が……どうしたの?たっくん。」
いきなりたっくんが立ち上がった。
「あー。もうママのバカ!デリカシーない!大体なんで今そんな話するんだよ!」
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