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半ば呆れながら笑うカイ。
そんな笑顔は子供の頃と変わらず私を落ち着かせてくれる。
心だけあの頃に飛んでいく。
初めて出会ったときからカイは笑っていた。その柔らかい金髪を揺らしながら、いつでも私に笑顔を向けてくれた。
一人ぼっちに耐えられなくて誰か側にいて欲しいと思うとき、カイはいつだっていてくれた。それがうれしくてしじゅうカイにくっついていた。私にとってのカイはいつでも側にいてくれる日常の一部だった。
だけど。
ある日突然、その笑顔が苦しくなった。彼の金髪が視界の端に入るだけで、息が詰まるような、逃げ出したくなるような感覚に襲われた。
うるさすぎる心音がばれないようについ顔を背けたり、無視したり。カイの後姿が目に入るだけで慌てて引き返したこともあったっけ。
あれって確か中学に上がる前だったよね。
うん、そう。
多分今のたっくんやミズキちゃんくらいの時。
「ああそっか。そういうことなのね。」
「え、なに?さっちゃん。」
ミズキちゃんも意識してるんだ、たっくんのこと。
きっとミズキちゃんはあの頃の私と同じなんだ。今までと同じように接したいのに何かが邪魔をして素直になれない。だけど目はいつも相手を追いかけていて、その癖悟られまいと意地になる。
自分の中で『好き』の形が変わってきていることに戸惑ってイライラして、切なくて毎日が熱っぽくて……。だからついつい避けてしまう。そりゃ好きな子の側にいたいたっくんにしてみればキッツいよねえ。
それにミズキちゃん人気者だしね。
「あー、思春期だぁーー。」
「だからなにが?俺全くイミフなんですが。」
あ、しまった。カイがいたんだった。
「ごめん、実は...」
ホントはさっきのやりとり、カイに話すのヤだけど。
***
「へえ。なーるほどね。」
頭のいいカイは私と違ってすぐに事情を察した模様。
「とにかくたっくんに謝らないと。」
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