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「いや、ちょっと待て。たっくんのことはほおっておこう。ママは何も気づかなかったことにする。」
「でも……」
言い募ろうとする私の唇にそっとカイの指が。
「さっちゃん。あいつももう12才なんだ。そういうことは自分で片を付けないと、な。」
そしてその指はカイ自身の唇の上に。それは内緒だよ、という合図。
そうね、12才だもんね。
「……はい。」
カイの手が私の頭をなでなで。
「大丈夫。なんてったってあいつは俺の息子だから。」
手のぬくもりがじんわりと私の頭頂部を温めているうちにもやもやしていたものがゆっくりと解けていく。
そっか。
さっきあれだけ混乱していたのに今度はストンと胸に落ちた。
これが親離れ、というものなんだね。たっくんは私がぼやぼやしているうちに大人に向かって歩き始めてるんだね。
そして私も、子離れしていかないといけないんだよね。
でもやっぱりちょっと寂しい。
「ママー、ただいまでし!」
「わ、どこから入ってくるの!」
タバサが垣根の隙間からひょこっと顔を出した。案の定髪の毛は葉っぱだらけ。そして両手いっぱいに抱えているのはやっぱり葉っぱ。
「はい、ママお土産!」
そう言って私の手の中に落としてくれたのは。
「カラスノエンドウ……」
タバサくん。これ今むしってるところなんですが。雑草でね、この種が飛ぶとね……
「ウタナちゃんがね、これって食べられるから持って帰りんって。」
「……ありがとう。」
捨てたら泣くよね。私怒られるよね。
でもタバサ。既に私の両手からはエンドウさんがぽろぽろと零れ落ちている。どんだけ取ってきたのよ。
「それからね、ウタナちゃんがね。」
でも本当に食べるのこれ?……レシピぐぐってみないと。
「あいことばはちっちゃいこびとだって。」
「うん、わかった、ちっちゃい...小人?」
合言葉?一体何のこと?混乱した私はカイにSОS。
が、彼は私など目もくれずスマホを弄っている。
「あとね。ウタナちゃんがこれくれた。」
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