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やまないで
「ごめんね。せっかくデートに誘ってもらったのに行けなくて」
「仕方ないさ。こんな大雨じゃ、服とか靴とか濡れて嫌だろ?」
「まぁそうだけど」
「電車も止まったから、今は通話で我慢するしかない」
「そうね。昨日もこんな雨だったし、嫌になっちゃう。頭も痛くなるし」
「大丈夫? 辛かったら無理せずに休んでよ」
「今は大丈夫。明日も普通に学校行けると思う」
「そうか、ならよかった。早く梅雨明けてほしいな」
「ほんとにね」
お互い、嘘をついていた。付き合い始めて二年経ち、マンネリ化してデートへ行くのが億劫になっていた。ただの義務感でデートへ誘い、いいよと返事し、雨が鬱陶しいと感じているフリをしている。だから二人は、この雨がやまなければいいのにな、と心のどこかで思っていた。
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