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「何で私だけがこんな目に…」
さっき使い果たしたかと思った涙がまた溢れ出す。大好きな彼氏には振られ、住む所も失った。今日はなんて日なんだ。
それにしても明日からどうしよう。貯金もないから引っ越しも生活も出来ない。私の頭の中では不安だけがグルグル回る。
「取り敢えず、ココで仕事をするかしないかだが…どうする?」
社長はテレビを消して私に聞いてきた。
ハウスキーパー…家主に代わり家の事全般を行う人。果たして私に務まるのだろうか。いや、今の私には選んでる余裕はない。
「やります。詳しく話を聞かせて下さい」
私は涙を腕で拭い、ゆっくりと立ち上がる。そして社長の前に立った。
「別に特別な事は何もない。俺がいない間に家の事をやってもらうだけだ。やる事やったら後は自由にして構わない」
「それだけ?」
もっと小難しくて大変かと思っていたが、どうやら普通のハウスキーパーの仕事みたいだ。
「但し、条件がある」
やっぱりか。
心の中でそう思ったが、話の続きを聞いた。
「まず、俺の部屋は何もしなくていい。絶対に無断で入るな」
「はい」
「それからこの家に誰が訪ねてきても応対しなくていい。無視しろ」
「分かりました」
「最後に、ココで仕事をする事は誰にも言うな。知ってるのは俺と高瀬とお前だけだ。いいな」
社長に念を押され、私は力いっぱい頷く。それを見た社長はソファから立ち上がり、奥の部屋へ入っていった。
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