あたしへ

　十年後のあたしへ。
　あたしはきっと十年前の今日の日を、懐かしんでいることでしょう。

　今朝、十年前のあたしが夢の中に出てきてこう言いましたよね。覚えていますか?
『十年後のあたしへ、あたしは十年後幸せになっていますか?』って、でもあたしには答えることができませんでした。
　だって『彼氏とは上手くいっていないよ』、なんて言える筈ないし。
『お父さんは去年亡くなりましたよ』なんて言える筈もありませんからね。

　自信がなくて躊躇(ためら)っているあたしへ、『たとえ良くない結果であっても、悪いことばかりではないんだよ。次へ進むための階段を一つ上れるのだからね』そう言って励まして、彼への告白の背中を押してくれた父が、もうこの世に居ないだなんて、弱虫だったあの頃のあたしに伝えられる筈がないですもの。