あたしへ

2/2
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 父を亡くし、寂しい思いをしているあたしを慰めてくれていた彼の態度が、近頃余所余所(よそよそ)しいだなんてことも言える筈はないでしょう?  十年前の意気地なしだった少女のあたしに、そんなことを言ったならきっと、お父さんの励ましを無駄にしてしまっていたことでしょう。  ですからあたしは十年前のあたしに『幸せですよ』とだけ答えたんでしたよね。  十年後のあたしはきっと、不安を抱えた今のあたしを笑っているでしょう? 彼が余所余所しかったのは、『プロポーズするタイミングを迷っていたからなのよね』って。  そう、さっき彼に結婚を申し込まれたの。  十年後のあたしへ、あたしは今幸せですか? 〈十年後に続く〉 
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!