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Would you be mine?
夕暮れに伸びる影から、一歩踏みだし。
振り返った彼女が、笑顔で言いきった。
「分からない。正確に言うなら、思考放棄した」
「即答だね」
「だってさ。今の私の状態じゃ、いつどうなるか、全く分からないわけで。両手で数えられない未来なら、考えるだけ時間の無駄。
悠君と話している時間のほうが、よっぽど有意義だよ」
薄水色の病院着の裾が、涼風に舞う。
「質問返し。悠君は、十年後どうなっていると思う?」
「僕も分からない、かな」
「残念。嘘をついている時の表情をしているよ、悠君。あいにく付き合いが長いものでね、君の心はお見通しさ。なんちゃって。
悠君。私は優しいから、一度だけチャンスをあげる。明日、君の本音を聞かせてちょうだい。
明日も嘘をつくようなら──私達、別れよう」
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