俺から僕からおっさんへ

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「よーっ。すっかり大人になったなぁ。25歳の俺」 「そういう君は思春期真っ只中だね。15歳の僕」 「聞いたぜー? ついに俺がずっと片思いしてたユキちゃんと結ばれたんだってな?」 「おいおい、誰に聞いたんだ。その嘘情報。未だ彼女すらいないよ。君が臆せずちゃんと告白してればそうなってたかもしれないね」 「それに大手ゲーム会社に就職してやり手クリエイターとしてバリバリ活躍してるんだってな。スゲーじゃん!」 「あはは、誰と間違えてるんだい? 僕は就職に失敗してニート生活五年目突入だよ。君がもう少し真面目に勉強してればねぇ」 「しかし三階建て庭つき地下つきプールつきのマイホームなんて羨ましいな。テスタロッサの乗り心地はどうだ? いやあ、早く俺も乗りてえなあ。10年後が楽しみだぜーっ」 「10年と言わず1年後に家も車も手に入るぞ。ゲームの中でだけど」 「この前なんか大ヒットゲームを生み出したクリエイターとしてテレビ出演も果たしたそうじゃん。SNSのフォロワー数も百万人突破して信頼できる仲間にも恵まれてさぞや充実した毎日を送ってるんだろーな。俺も同じ自分として鼻が高いよーー」  僕はそこでカメラを止めた。  はあ……こんなに惨めな気持ちになるんだったら、10年前に撮影した動画を使用した“10年越しリモート対話”なんてやるんじゃなかったな。  ……いや、この気持ちをバネに頑張ってもらわねば。  僕はもう一度カメラの録画ボタンを押した。 「おいっ! 聞こえてるか35歳の僕ッ!」  終 
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