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俺の頭の中でずっと残っているのは、皆からいじめられてスンスンと泣いている君の姿だった。
君が悪いせいでは消してないのに、悪いのは大人たちだというのに、
そして、俺のせいだというのに。
「ごめん……」
泣いている君へいくら謝っても謝りきれない。
そんな君を見ているのは耐えられなくなって、俺は逃げ出したんだ。
君の悲しさごと連れ去って。
***
「ねぇ?」
「ん、なんですか?」
10年後、久々に出会った君に俺は問いかけた。
「辛い事はもうない?」
俺の問いに君はキョトンとした顔をする。暫く、考えた後に君はこう答えた。
「そうですねぇー。10年前以前の思い出が消えてしまったことはツライといえばツライですけど、その分、それ以降の楽しい思い出がありますから。何も辛くも恐くもないですよ?」
ニッコリと笑う君の表情に何か心につっかえていたモノが取れたような気がした。
「それにしても、何故僕に辛いかって訊いたのですか?」
「ん? ひみつ!」
俺はいたずらっぽく答えてみせる。
拝啓、10年前のキミへ。
10年後の君はもう泣かなくなったよ。
だから、大丈夫。
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