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十年前の俺へ
キミがこれから先の十年を大変有意義に過ごす事は、未来の俺が保証する。
キミは後に主席で大学を卒業し、一流企業で働き始める。
若くして出世コースに乗り、素敵な女性とも出会い、もうじき子供も生まれる予定だ。
だがただ一つだけ、これから書く事を気に留めておいて欲しい。
キミは二十六歳の誕生日、妻と共に ある物件を見つけるだろう。
大きな広い庭。
レンガ仕立ての洒落た一軒家だ。
キミはその物件を大変気に入るが、結局そこではない高層マンションの家を買う事になる。
上階の子供の足音が酷くて、嫌な家だ。
必ずレンガ仕立ての一軒家を買え。
それでキミの未来は全て安泰だ。
◆◆◆
『十年前のキミへ』という手紙を、過去の自分に送ったキミへ
今すぐその書きかけの手紙を破棄しなさい。
俺はお前の十年後の俺だ。
お前が過去の自分に買えと言った家は、呪われている。
夜になると、あるはずのない三輪車が庭でキコキコ音を立てて走る。
そこにいるはずのない子供の霊が三輪車を漕いでいる。
二階へ続く階段には女の霊がいる。
二階の部屋には首を吊った男の姿が見える。
十年前の俺に、その物件を買わせるな。
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