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八歳の時、初めての恋に落ちた。相手は、隣の家に住む大学一年生のお兄ちゃん。ちょっと頼りなさそうだけど、とってもやさしいの。
「ねえねえ。はる兄って彼女いるの?」
「ぶふっ。ねえ、まなかってまだ九歳だよね? ませすぎじゃない?」
「えー? クラスにはカレシがいる子もいるよ」
「ほえー。最近の小学生はすごいねぇ」
十歳になり、人生で初めての告白に挑んだ。
「まなかは、はる兄のことが好き」
それなのに、彼は眼鏡の下の瞳をまん丸にして硬直しているばかりだ。
「はる兄は? はる兄もまなかのことが好き?」
首をひねると、彼はあたしの頭を撫でた。
「あー、うん。もちろん、僕もまなかのことが好きだよ?」
むむ。この反応、誤魔化されている?
「それは、女の子として?」
「ごほっごほっ」
「ねえ! あたし本気だよ?」
はる兄は、悲しげに瞳を伏せた。
「……ごめんね、応えられないや。今のまなかはきっと、年上で自分より物知りに見える僕に幻想を抱いてるだけだよ」
「そんなことないっ」
「ううん」
どうして? 歳が離れてるってだけで、あたしの想いは、偽物にされちゃうの?
遠ざかっていく彼の背中を見つめながら、拳を握りしめた。
ねえ、はる兄。
今のがあなたの本音なら、どうして――
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