あたしの初恋は本物だ

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 十年前に、まなかを振った夢を見た。  昔のこととはいえ寝覚が悪い。急激な罪悪感に襲われて寝つけなくなった僕はベッドを抜け出して、ペンと紙を手に取った。 『十年前のまなかへ  初めて君から告白されたあの日から、ちょうど十年が経った。三十歳の僕は、先月、二十歳になった君とお付き合いしはじめた。  僕は、君に、謝らなければならないことがある。  十年前のあの時のこと、本当は心の底から嬉しかったんだ。僕も、君のことを女の子として意識していたから。  でも、周囲の目が怖かったんだ。十歳も年下の君に恋焦がれる気持ちを、世間は、穢らわしく思うだろう。僕はずっと、この恋を、罪としか思えなていなかった。  本当にごめん。情けない僕だけど、十年後の君を絶対に幸せにしてみせます』 「はる、寝れないの? なにして……ん、手紙?」  大人になった君は問答無用で僕の手から紙切れを奪った。 「勝手に読まないでよ!」 「ふふっ」 「な、なんだよ」  そっぽを向いたら、君は笑った。 「あたし、はるのホントの気持ち、なんとなく分かってたよ。だからずっと諦めないでいられたの。だって、あの時のはるは――」  ――あたしより、泣きそうな顔をしていたでしょ? 【完】
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