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『本日は長時間の取材に応じて頂きまして、心底よりの御礼を申し上げ奉ります。クリストファー・ド・フォン・ソリュード国王陛下』
『いや、予も有意義な時間を過ごせた。啓蒙新聞の記者殿』
本日は異母弟のヨーゼフ公爵閣下が専制君主として治めていられる、シュレジエン公国の啓蒙新聞社の記者の取材に応じましたけれど。ソリュード王国の専制君主である予に対して、異国の新聞社に所属する記者という立場から遠慮の無い質問を行ったので、普段は予に媚びる臣下に囲まれている身分からすると、久し振りに新鮮な気分が味わえましたね。
『あっ、そうでした、最後に一つだけ。直ぐに済みますので宜しいでしょうか?』
取材用のマイクを外そうとしていた予に対して、経験豊富な記者殿がもう一つだけと尋ねたので。
『何かな?』
記者殿は予の目を真っ直ぐに見詰めながら。
『十年前の御自分に何か一つ助言出来るとしたら、何と言われますか?』
『何も無いな』
即答した予に対して、記者殿は満足気な笑みを浮かべると。
『専制君主は決して間違わない。従って過去においても未來の御自分に関しても、何一つ助言なされる事は無いという事ですね?』
『解っているではないか』
専制君主制度を採用している王国において、専制君主は絶対に間違わないですから、十年前の予も十年後の予も常に正しいのです。
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