海の見える町からあなたへ

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10年後のあなたへ まずはじめに、このデータを見つけてくれてありがとう。 今、あなたがどこにいるのかとか、何をしているかとか色々聞きたい事はあるけど、おそらく意味はないので、僕たちの事を話そうと思います。 僕たちは、ハルガスミという綺麗な海の近くの町で生まれ育ちました。 僕たちはこのハルガスミという町の自然と人々の暖かさが大好きで、だから、最後もこの町で迎える事にしました。 もちろん、最後の日が近づくにつれて、不安や恐怖というものが付き纏い、人によっては、毎日泣きくれる人もいました。でも、ある時、僕たちが本当に怖い事ってなんだろうという事を考えました。 きっと、僕らは死ぬ事が怖いのではなく、自分の存在や自分が精一杯生きてきた事を失う事が怖いんだという事に気が付きました。 だから、みんなの生きていた証としてこのメッセージを残す事にしました。 さて、僕たちは今まで、ただ、なんとなく生きてきました。生きるのに意味があるのか分からない。そんな事を考える事もありました。 でも、最後の日まで後、数日という今になって、そんな日常を失いたくないって強く思うようになりました。 生きている意味なんて無いのかもしれない。でも、何気ない人生の中で失いたくないものがあるんだって思うようになりました。 あなたが、今どんな事を考えて、生きているのかは分からない。 でも、もし、あなたが生きるのに迷うようになったなら、一度立ち止まって、失いたく無いものを探してみてください。 きっと、貴方にもそれはあるはずだから。 ここまで読んでくれてありがとう。貴方の人生がよりよいものになりますように祈っています。 ハルガスミ町 住民一同 そのメッセージはそこで終わっていた。そして、最後にそのメッセージの主の集合写真が添付されていた。 「何を見ているの?」 「今、この瓦礫の下で見つけたメモリを読み込んで読んでたんだ」 「へぇ、なんて書いてあったの?」 「いや、なんでも無い事さ」 「そっか。でも、ここにも生きている人いなかったね。私たちこうしている意味あるのかな……」 「どうだろうな。でも、さ」 「でも……?」 「いや、こんな生活の中でも失いたくないものってあるんだろうなって思ってさ」 「よく分かんない」 「まぁ、いいさ。とりあえず次の行き先は決まったからさ」 「どこ行くの?」 「海さ」 「海?」 「ああ、海を見せたいと思ってさ」 メモリを振りながら、俺は彼女にそう答えた。 fin
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