ただ一つの愛情

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…よくやったわ、10年前の私。やっぱりあの人にして正解だった。  背が高くて頭が良くて、一番人気だった彼。100人の女の子と付き合った噂もあったけど、私を選んでくれて本当に嬉しかったわ。  彼は私じゃなく事業に興味があったのはすぐに分かったけど、よかったの。でも結局は寂しくなって、ホストクラブ通いがやめられなくなったけどさ…  それでも今こうして会社があるのは、あの人のおかげだもんね。10年前に2回目の不渡りが確実になって、もうダメ潰れると思った時、あの人が助けてくれた。  2人で入った生保がちょうど満期直前のタイミングで、逝ってくれたんだもの。満期の返戻金なんてたかが知れてるし、本当に助かったわ。あの保険金で会社は持ち直した。  しかも愛人と同乗した車で事故死なんて、もう最高よ。私に疑いがかからないようにしてくれたのは、あの人のただ一つの愛情だったのかもね。  今日は10年目の命日。彼が好きだったミクターズライの10年を、墓前にお供えしてあげよう。その後はあの娘のお墓にも行かなきゃね。あの娘…私は一緒に死ねとまでは言ってないのにさ。昔っから、可愛いだけの馬鹿な女。  ま、おかげで礼金も払わずに済んだわ。感謝してるわよ、梨沙。
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