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一通は自分に、そしてもう一通は意中のA君を思ってラブレターを書いた。友達の枠からはみ出す勇気が無くて、告白をする意味で想いの丈をしたためた。
この熱い気持ちはきっと変わらない、十年経った未来の私がどうにも出来ずに持ち続けているだろう、そう確信したからこそ書いた。
けれど、時間というのは長いようで短いものだったのかもしれない。
軍手をはめた手でスコップを握りしめながら、硬くなった土を懸命に掘り起こした。
額にジワリ、と汗が滲んだ。
ファンシーなレターセットを使って『十年後のA君へ』と書いた手紙を思い出し、私はグッと歯をくいしばった。
鮮やかに駆け抜けてきた十代を思い返すと色々あった。
まず、私の恋心が実ったのはタイムカプセルを埋めてから五年後の春で、意中のA君から告白を受けた。
勿論答えはYESだ。
晴れて大好きだったA君と付き合えて、中学三年生の日々はバラ色になるはずだった。
しかしながら、バラ色の彼女生活は半年後、別の事実によってばらばらと崩れ落ちた。
A君はあろう事か親友のBちゃんと二股をかけていた。
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