10年後のキミへ

3/9
前へ
/9ページ
次へ
その瞬間、大好きでたまらなかった彼がただの軽薄な男に変わった。 それまでキラキラと輝いて見えた笑顔がくすんで見え、果たしてこの恋は本物だったのだろうかと不思議にすら思った。 額に若干の汗を浮かべながら、私は涙目でスコップを動かした。 やがてスコップに手応えを感じ、カン、と音がした。 十年後の彼を思って書いた手紙を撤収したいのは、何も自分の見栄やプライドを守りたいだけじゃない。 私はせっせと手を動かし、当時ピカピカだったスチール製の空き箱を土の中から持ち上げた。 錆びてところどころが変色していた。 ハァ、とため息が漏れる。瞳いっぱいにたまった涙が目尻からツツっとこぼれ落ちた。 A君の裏切りを知り、別れてから二年後。 私はC君を好きになった。 いつも近くで優しく接してくれた彼は、この十年で見事に成長し、当時私よりチビだった背も伸びてイケメンになった。 見た目が変わったから好きになったとかそんな理由じゃない。 ただC君の優しさが身にしみて、気付いたら異性として意識するようになっていた。 ハタチになった今でもその想いを伝えられず、片思い中だ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加