キミたちの生まれた日

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「旦那さんは!?」 「早く、搬送を!」  お腹が痛い。ドクンとした痛みは次第に大きくなっていき、呼吸とともにお腹がうねる。 「力まないで!」  それってどうやるの!?  力んでるつもりはまったくない。走ってるときみたいに早くなる呼吸をむりやりゆっくりにする。  大きく息を吸う。吐く。  なんで。  吸う。吐く。  なんで、ここで産めないの!? 「総合病院受け入れ可能です!」 「よし! 搬送!」  早産未熟児になりやすい双子は、NICU、赤ちゃんが入る集中治療室に空きがないと産めない。 「昨日、ブルームーンでたくさん生まれたもんねえ」 「神秘的ですよねえ」  先生やベテランの看護師さんのお茶でも飲み出しそうな会話を後に、私は救急車に乗った。 「私、こっちの体位の麻酔苦手なんだよねえ。あ、動かないでね!」  不穏な言葉に体がピクリとする。  いやいや、今めっちゃお腹痛いんすよ、ついでに呼吸も苦しいんですよ、背中の麻酔とかめちゃくちゃ痛そうじゃないですか!  搬送先の病院の先生たちは、全員ベテランでその余裕が逆に不安だ。 「はい、ひとりめの赤ちゃんよ。こっちが下側にいた子」 「こっちの子がふたりめの子ね。どっちも女の子よ」  二人の顔はしわくちゃで、そっと握った手はとてもとても小さくて、思わず泣いてしまった。
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