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「君は龍になれると思う?」
真純はふいに僕に問う。クラスメートに散々同じ質問をしてきたみたいで、どうやら僕が最後の標的のようだ。
「龍になれる条件って?」
僕が尋ね返すと彼女はにんまりと頬を緩める。
「よろしい。門前払いせず答えたので第一関門突破!」
なんだろう、彼女なりの審査基準があるらしい。真純は嬉々として続ける。
「まず、貴方はトカゲです」
「ふんふんトカゲね」
「おっいいねその反応。大体トカゲって言われただけでバカにしてるって怒る奴もいるんだよね」
「いいけどトカゲだとして続きは?」
「うん。あのね、十年間、一度も疑うことなく龍になれるって信じ続けたトカゲは、本当に翼が生えてくるんだってさ。もし君がトカゲだったら信じ続けられる?」
そう言って真純は僕の反応を伺う。彼女の意図は不明だが一応、返事をする。
「十年信じ続けるってなかなか大変だ。まあ、本当になりたいならできるかも。でも翼が生えたトカゲなんて見たことあるの?」
「ないよ、だって飛んでっちゃうもん。でも、君は真面目に最後まで話を聞いてくれたから合格!」
「合格?」
「そう、だから聞いて。これは誰にも言わないでほしいんだけど」
「うん?」
どうやら真摯に話を聞いてくれる人を探していたようだ。真純は僕に寄り添い小声で言う。
「あたしね、小説家になりたいって思ってるの。それでね、あるウェブサイトで小説を書いてるんだけど、いくらコンテストに応募しても全然通らないの」
「へぇ、難しいんだね」
「うん、十年。小説で芽が出るにはそれくらいかかるんだって。だけどあたし、自分を信じ続けられるか全然自信ないの……」
語尾が不安を抱いた小声になってくる。そこで僕はあることを思いついた。
「じゃあ、僕もそのサイトに登録するよ!」
「えっ、ホント!?」
「それで真純の小説を読んで、たくさん応援するよ。応援されれば続ける気になるじゃない?」
「わぁ、嬉しい!きみ、良い奴だねー」
頬を紅色に染めて満面の笑顔を浮かべる。
「それで十年後の真純が、龍になって飛んでいるか、僕が見届けるよ」
そういったのは弾みでしかなかった。ただ、この時確かに、僕も夢見始めていたのだ。
龍になれるかもしれない、創作の世界というものを。
僕は興味津々で真純に尋ねる。
「で、どんなサイトなの?」
すると真純は呼応していきいきと話し始めた。
「えと、それはね、水色丸々の――」
――そう、僕達の挑戦はここから始まったんだ。
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