君だけは、変わらないで……

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「あれ? カオルじゃね?」  彼氏と歩いてるといきなり声をかけられた。 「……勇士」  心臓が飛び出るかと思った。 「知り合い?」と彼氏に聞かれ、頷いた。 「えと、中学の同級生でーー」  初恋の人。 「親友って言えよ! 水臭いなぁ。って10年ぶりくらいだっけ? お前地元の高校行かなかったもんな? ってか、引っ越したって聞いてショックだったんだぜ? カオル、あのころスマホ持せてもらえてなかったもんな?」  あの時と同じテンションで話しかけてくる勇士。  屈託ない笑顔も変わらない。誰にでも優しくて、みんなの真ん中にいるような人。自分だけに向けられる笑顔じゃないけど、やっぱり好きだなって思う。 「カオル、話して来いよ。俺、ちょっと見たい店あるし」 「え? あ」 「そんな俺に気ぃ遣うことないって! 一緒に話さね?」  勇士はそう言ったけど、彼は気を利かせて時間をくれた。 「別に一緒でもいいのにな? もしかして人見知りするタイプ?」  そう言いながらファストフードのドリンク片手に勇士は笑う。 「ってか、高校ではテニスやんなかったのな? どの大会でもお前の名前見なかったし」  彼の問いにコクリと頷く。 「いつか一緒にダブルスやろうって約束したのにさ」 「……膝、壊して」 「え? マジ!? 大丈夫なんか?」 「うん、日常生活には支障ないって先生が……」 「そっかぁ」  そういうと彼は心底ほっとしたような顔をする。  変わらない。10年前からずっと変わらない。 「ライン、交換しね? また会おう」  断れずに交換して、別れた。
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