85人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれ? カオルじゃね?」
彼氏と歩いてるといきなり声をかけられた。
「……勇士」
心臓が飛び出るかと思った。
「知り合い?」と彼氏に聞かれ、頷いた。
「えと、中学の同級生でーー」
初恋の人。
「親友って言えよ! 水臭いなぁ。って10年ぶりくらいだっけ? お前地元の高校行かなかったもんな? ってか、引っ越したって聞いてショックだったんだぜ? カオル、あのころスマホ持せてもらえてなかったもんな?」
あの時と同じテンションで話しかけてくる勇士。
屈託ない笑顔も変わらない。誰にでも優しくて、みんなの真ん中にいるような人。自分だけに向けられる笑顔じゃないけど、やっぱり好きだなって思う。
「カオル、話して来いよ。俺、ちょっと見たい店あるし」
「え? あ」
「そんな俺に気ぃ遣うことないって! 一緒に話さね?」
勇士はそう言ったけど、彼は気を利かせて時間をくれた。
「別に一緒でもいいのにな? もしかして人見知りするタイプ?」
そう言いながらファストフードのドリンク片手に勇士は笑う。
「ってか、高校ではテニスやんなかったのな? どの大会でもお前の名前見なかったし」
彼の問いにコクリと頷く。
「いつか一緒にダブルスやろうって約束したのにさ」
「……膝、壊して」
「え? マジ!? 大丈夫なんか?」
「うん、日常生活には支障ないって先生が……」
「そっかぁ」
そういうと彼は心底ほっとしたような顔をする。
変わらない。10年前からずっと変わらない。
「ライン、交換しね? また会おう」
断れずに交換して、別れた。
最初のコメントを投稿しよう!