10年後の君へ

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10年後の君へ

テニス部のマネージャーだった私・佐藤すずは、卒業式のあと卒部したメンバーを部室裏に呼んだ。 集まったのは4人。 私と同じマネージャーだったゆかりんと、部長、そして弱小と言われバカにされていたテニス部を全国区レベルに押し上げた伝説のダブルスペア・佐川くんと大和くんの二人。 私は用務員さんから借りたシャベルを地面にぶっさし、皆に言った。 「皆バラバラの高校に進学するし、思い出作りにタイムカプセル作らない?」 「タイムカプセルって……学校から許可取ってる?」 慎重派な大和くんが心配そうに聞く。 「顧問のすぎやんにOK貰った!」 大和くんにブイサインをする私。 「なら、いいけど」 ほんのり頬を染め、大和くんは目をそらした。入部当初から彼はシャイだ。 「箱は?」 幼馴染みの佐川くんが、大和くんを睨みながら聞いた。大和くんも佐川くんを睨み返す。この二人、3年間部活でダブルスを組んでいたわりに仲はよくない。 ゆかりんいわく、恋のライバルだかららしい。 「ボールの空容器使おうかなって。あまり入らないからノートの切れ端にメッセージ書くらいしか出来ないけど」 ゆかりんが私に抱きついて言った。 「良いじゃん! どうせならさ、10年後の未来の自分に手紙書かない?」 ゆかりんの押しもあり、私たちは10年後の自分に対してそれぞれ誓いのメッセージを書き、タイムカプセルを埋めた。 あれから10年後。 私たちは再び、部室裏に集まった。 佐川くんと大和くんはプロの選手になり、海外から来るので少し遅れると連絡が。先に開けていいと言われたので、私たちはタイムカプセルを掘り起こした。 「それじゃ、開けるよ」 私は10年ぶりにタイムカプセルを手にした。蓋がきつく力一杯引き抜いたら、紙切れが地面に散らばった。 慌てて皆で拾っていると、ゆかりんがにんまりした顔で拾った紙を読んでいた。 「それ、佐川くんのやつだよ!」 「ごめん。たまたま中身見えちゃって」 悪びれもせず、ゆかりんはぺらっと紙を反転し、私に中身を見せてきた。 ーープロになってすずと結婚する。 紙にはその一言だけ書かれていた。 慌てる私に、部長がにんまりした顔で言った。 「奇遇だな、俺も同じ文章を見つけた」 部長が紙を反転し、中身を私に見せた。 ーープロになって佐藤さんと結婚する。 黒根大和。 ニヤニヤした視線に晒される私、二人が到着するまであと10分。 二人から10年越しのプロポーズをされるまでのカウントダウンが始まった。
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