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気付いたら読了してしまっていて、速読の私でも一冊読み終わるのに1時間半程度はかかってしまう。冷たくなったコーヒーを流し込んでから本を閉じて傍におき、マスターにおかわりをお願いした。
「お姉さん。その本…どうだった?」
突然横から聞こえた声にビックリした私は声がした方向へ視線を向ける。そこには先ほどの彼が肩肘をついてこちらをじっと見つめていた。
「え、この本の感想ってこと?」
と私が戸惑いながら聞くと彼は間髪入れずにそうっと少し前のめりになりながら返事をする。新人作家さんのものだったし、彼も本が好きなのだなと考え直してこの本について語って聞かせた。
すると、まだ半分ほどしか話をしていないのに、彼は「ちょ、ストップもう、いい…やめて下さい」と頭を抱えた。私は首を傾げながら不思議に思ってるとマスターが笑いながら私と彼の前にコーヒーを置いた。
「北原くん。自分で聞いておいて途中で辞めさせるなんて読者に対して失礼なんじゃないかな?」
「…読者に対して??…北原くん。」
そっとその本の作者の名前を確認するとそこには北原春風とある。
「あのー、もしかして、もしかしなくてもしや、この著者は貴方なの?」
私の日本語になってない問いに彼は小さくコクリとうなずいた。そして今度は私がまだ顔を赤くして手で顔を覆った。
「私ったら、本人に向かって恥ずかしいことをこちらこそごめんなさい。」
今度は私が頭を抱えるようにして彼の視線から逃れた。穴があったら入りたいとはこのことだろうか。
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