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その後、その見知らぬ誰かの善意の通報により保護された私達は、施設で育った。
ちゃんとご飯も食べられるし、寒くも暑くもない。
小学校にも通わせてもらえた。
人より少し遅れてだったけれど、なんとか友達も出来た。
歳を追うごとに、『可哀想』と言われることが増えた。
どうやら私達が信じていた家族の形は、世間とは違う。
そう思い知らされて生きてきた。
でも、妹と時々手を握って星空を眺めては、行方の知れない父と母の幸せな物語を紡いだ。
捨てられた事など、理解していた。
それでも尚、父と母に不幸になっていて欲しくなかった。
思い出すのは、降りかかる拳。
それと、たまにむけてくれた笑顔。
繋いでくれた手の温もり。
私達を傷付けるその拳が気まぐれで優しさに変わる時。
その時が当時は幸せだった。
愛を感じ、自分達は嫌われている訳ではないと言い聞かせて。
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