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雨の夜は、雨の音を聞いた。
雨の音で妹の声が聞きづらかったので、ひたすら雨の音を聞いた。
雷の夜は、妹と2人ぎゅっと抱き合って過ごした。
雷から身を隠すように。
少しでも妹を隠そうと、まだ短かった手を目一杯妹の背中に伸ばした。
そうして幼少期を一緒に乗り越えた妹が、結婚した。
私はもちろんすごく嬉しかったし、旦那さんも良い人で安心している。
妹が幸せになることを私以上に望んでいる人間はいない。
よかった。
妹にはもう、守ってもらえる人が出来たのだ。
私は肩の荷が降りたと同時に寂しくもあった。
もう1番近くにはいられない。
当たり前だけど、私にとって家族がもうなくなってしまったという喪失感が拭えない。
父と母に捨てられた私達。
あの日もベランダに出ろと命じられて、そのまま居なくなってしまった。
朝になっても入れてもらえずに不審に思って窓に手をかけると、あっさり開いて、そこには誰も居なかった。
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