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奇妙な手紙が届いた。
白紙の手紙だ。宛名はあるが、裏には何も書かれていない。
そして、宛名には懐かしい名前が書かれていた。
……10年前。
僕は、とにかく何かがしたくて、『自分探し』等と称しては一人旅に現を抜かしていた。
そんな時だ。彼女と出会ったのは。
出会ってすぐに、僕達は恋に落ちた。彼女はとても魅力的で、この人となら共に生きていけると思った。
『必ず迎えに行く。そしたら、結婚しよう』
別れ際にそう約束した程、僕は本気だった。
だが、約束は果たせなかった。
同じ頃に、父が亡くなったのだ。僕は仕事や残された母の世話に追われるようになった。
そして、一年が過ぎ、二年が過ぎ…。
その間に彼女ではない女性と結婚し、子どもが生まれ、気が付けば10年が過ぎていた。
今の生活は安定してる。幸せだとも思う。
だが、彼女はどうなのだろう。
もしかしたら、まだ僕を待っているんじゃないだろうか。
約束を反故にした僕を、恨んでいるじゃないだろうか。
『いつまでも待っている』
『早く迎えに来て』
そんな言葉が、白紙の手紙に浮かんでいるような気がした。
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