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大きなお腹は少しとんがった形をしてる。
周りから“男の子のお腹だね”と散々言われていたから、エコーで男の子って教えてもらったときは、やっぱりなんて思った。
「ママ!赤ちゃん、早く出てきてくれないかな~?」
「僕がいっちばん最初に抱っこするんだからね!」
「お兄ちゃんずるい!私が先!!」
私のお腹を触りながら喧嘩してる二人。
私たち夫婦に最初の天使が舞い降りたのは、九年前。その次はその三年後。
もう少しで我が家は更に賑やかになる。
「ママー!花火上がった!パパのところに行こうよ!」
花火はこの家からは少し遠くて小さいけれど、のんびり見られるから不満はない。
「きれー…、あっ!ピンク!おっきー!」
「あっちの下の方もきれいだよ!すっげぇ!」
子供達は興奮しておとなしく座っていられない。目の前の道路のギリギリまで行って見てる。
「側溝に落ちていかないように、気を付けるんだよー!
……大丈夫かなぁ。あの二人全然足元見てないよ。」
「毎年でしょ、大丈夫よ」
チェアをよいしょっ、と私の方に近付けてすぐ隣に腰掛ける。
とにかく私の近くに居たがる彼は、少しの距離でも離れることが許せないらしい。
私のことを大好きな夫にプロポーズされたのはちょうど十年前。
今日と同じように、花火が夜空に舞い上がって見惚れているときだった。
でも花火の上がる音と同時に私へ伝えるから、聞こえなくて。
すると「どうしてこんな時まで決まらないんだ…」なんてちょっと泣きそうになっていたから、私、失笑しちゃったんだよね。
年を取っても、変わらない…ううん。それ以上に愛を注いでくれる彼。
優しいパパであり、愛すべき夫。
この人と結婚できて、本当に、よかったな。
「……ありがとう」
今目の前で上がる花火に見惚れる彼の横顔にそっと呟く。
「えっ?なに、何て言ったの?」
「ううん、なんでもない。きれいだねって言ったの」
「そっか。うん、きれいだね」
指輪を愛しげに撫でるその指が少し伸びてきて、私のお腹に触れる。
「おーい!来年は、五人で花火見ような!」
彼の声に応えるように、ポコポコとお腹の壁が刺激される。
「あ、動いてる。わかったよー、だって」
「優秀だなあ、さっすが我が子」
「でたでた、親バカ」
「そりゃそうだよ。俺たちの子供だもん」
ニカッと白い歯を見せて微笑む。
私もつられてふふっと笑ってしまう。
十年前も、今も、そしてきっと十年後も、あなたと一緒なら、いつだって幸せね。
ずっと、ずっと。
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