あの雨のよる

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 「ねえ、こげんとこで寝とったらかぜひくよ」 「ひかんさ、こんだけ蒸す夜に」 誰や。 随分懐かしか訛りやねって思うたね。 自分がどげん恰好かはわからんでもなか。 普通誰も近づかんさ。 雨ん中ドロドロの泥酔やったもんな。  「んんんしょーーーー」 無理やろって思うたけど。 いや、ちーっちゃか女の子のさ、慣れた仕草でおいば担ぐごとして立たせて歩かせだしたもんな。 たまげたよ。 「家はどこにあっとですか?」 家?なかさ。 あんときは住所不定の無職やったもん。  なあ、幸、10年前どうしておいば拾うた? や、拾うてくれて助かったばってんね。 ボロボロやったもんな。 今もボロボロばってんな。 普通あげなことはせんやろ。 そっから10年居座らるっとも思わんやろな。  あん夜、幸は誕生日やったとにな。 災難やったな。 んー。 でも言わせろさ。 愛しとる。 ありがとうな。
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