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暗い、暗い土の中で僕は大冒険をした。
覚えているだろうか。僕が偶然仲間を見つけたときのことを。
あの子はまだ幼いのか、よくわかっていないようだったけれど、先輩としてこの辺りを案内してあげたんだ。だけどあの子はいつの日か動かなくなって、そしていなくなってしまった。
思い出は他にもある。あれは僕が遠くまで出かけたときのこと。あの日の食事はとびっきりおいしかった。できることならずっと食べていたいと思ったけれど、迷子になってしまったんだよね。キミはもう一度食べることができたのかな。
僕ももうだいぶ大人になったけれど、キミはもっと大人になっているのだろうね。
きっとキミは今からもっと広い場所に、大冒険に向かうのだ。
嗅ぎ慣れた住処と別れ、硬い天井を突き破る。僕を育ててくれた木に登り、目を閉じて覚悟を決める。一体どんな感覚何だろうね、僕には見当もつかないよ。
日が昇れば体が乾く。さぁ、翅を広げて。
「ママ、見て!」
「すごい大群ね!」
僕らはずっとその日を待ち望んでいる。
退屈な暗闇を出て、そこには何があるのだろう。子を残すために、重力に抗った僕らは何を手に入れるのだろう。
キミの目に映る世界は、空は。
せーので大空を飛ぶ仲間たち。
誰よりも大きな声でここに居るぞって叫んで。
この世界に生まれたことを、その空を舞った存在を、きっとキミは証明してくれる。
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