タイムカプセル

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「10年たったらみんなで掘り出そうな?」  そう約束したのが、ちょうど10年前。  俺は、あの場所に立ってる。 「……誰もいねぇじゃんか」  あんな子供んときの約束、だれも覚えてないとは思ってたけど、マジで俺しかいないなんて……。 「馬鹿だな、俺」  そう言いながらも俺はショベルを手にして、そこを掘り始めた。  どんだけ深く埋めたのか、それはなかなか出てこない。だけど俺は掘り出さないといけない。  子供が埋めたんだからそんなに深いはずはーー。 「アキラ! 何やってんの?」 「え?」  振り返ると、俺と一番仲良かった健斗が立っていた。  10年前と同じ姿で。 「……なんで?」 「それは俺が聞きたいって。それ、まだ掘っちゃダメだって」  子供の姿のままの健斗が俺を見上げる。 「そうだよ? みんなで掘り返そうって約束したじゃん」  すると、今度はアカネもあの頃の姿でぴょんと飛び出してきた。彼女に続いてほかの奴らも……。 「アキラ、なにぼーっとしてんの?」 「お前、いつもぼーっとしてるよね?」  みんなが俺のそばに寄ってきて、笑ってる。昔と同じ姿で、同じ声で、同じ笑顔でーー。 「みんな……、俺……」 「あーあ、もういつまでたっても泣き虫だな? アキラは!」  シシシッと健斗が笑う。 「さあ、みんなで掘ろうか?」  それからみんなでタイムカプセルを掘った。  不思議と怖くない。  指先に何か硬いものが当たる。  俺はシ両手で土をかき分けて20センチ四方の箱を取り出した。  みんなで埋めたタイムカプセル。  開けると、みんなの宝物が出てくる。 「あ、あたしのドレス!」  アカネはお気に入りの人形の服、彼女はデザイナーになりたいと言っていた。 「きゃあ! タク様ぁ!」  ほかにも、好きなアイドルの写真を入れてる奴もいるし、 「カード! ちゃんとあるじゃん!」  貯めた野球カードもある。 「俺のはやるよ、アキラ」  健斗はそう言って俺に一通の手紙を渡す。 「じゃあな、アキラ」 「ま、待てーー」  俺の声なんて聞こえないのか、アキラはみんなを連れて消えてしまった。  残ったのは、一通の手紙。 『アキラへ  また、会えるかな?』  汚い字でつづられた、俺への手紙。  みんな孤児で、施設で一緒に暮らしてた仲間。だけど、俺は里親に引き取られることになって、だからみんなでまた会おうとタイムカプセルを埋めた。  その数か月後、その施設に放火がありみんな死んでしまった。  俺だけが、生きてる。 「また、来るよ……」  だから、出てきてくれよな、親友。
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