10年後

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10年後

 とある怪しいお店で、「夢の中で10年後の自分に会える枕」を買った。10年後の自分は30歳だ。何しているのかなあ。就職できてるかなあ。結婚しているかな。子供もいるかも。もし独身でも、そのあと結婚する可能性もあるよね。ちょっと見てみたいな。  わくわくしながら眠りにつき、私は30歳の自分と会った。顔は意外と変わってないや。  私と目が合った30歳の自分は浮かない顔をしていた。 「どうしたの?」 「さっき10年後の自分に会ったんだ」 「へ? あなたの10年後ってことは40歳の私?」 「うん。40歳の私は今さっき10年後の自分と会ってたんだって」 「ということは50歳の私に会ってたのね」 「そうよ。50歳の私もさっき10年後の自分に会ったらしいわ」 「じゃあそれは60歳の私ね」  相槌を打った30歳の私は、ゆっくり話を続けた。 「そう。60歳の私に会った50歳の私、その50歳の私に会った40歳の私、その40歳の私に会ったのがこの30歳の私よ」 「じゃあ、30歳のあなたは60歳の私が何してるか知ってるってこと?」 「そうよ、60歳の私は腰痛と戦いながら……」 「ぎゃー! やめて! そんな先のことまで知りたくないー! 人生全部教えないでー!」  そこで目が覚めた。 「はあ、はあ、10年後を覗くつもりが、大変なことになるところだった! もう、一日後の自分にすら会いたくない!」  枕は押し入れにしまった。捨ててしまうのも、他の人が拾ったらやばいし。  10年後の私へ。  あの枕はもう使わないでね。  いや、「あれ?この枕いつ買ったっけ?」とか言って使っちゃうのはもうわかってるけど……  
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