40年後の変なアイス

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「いつか水族館で食べたあの変なアイスってなんて言ったっけ?」 「水族館?」 「ほら、あのなんか不思議な食感で冷たいんだけど熱くて甘いみたいな感じの」 「ちょっと待って。私あなたと水族館なんて行ったことないけど」 「……ホント?」 「そもそも水族館に最後に行ったの中学の時だし。別の女と間違えてるんじゃないの?」 「……あ、そうか。一緒に行ったのは10年後のキミだった」 「……は?」 「10年後のキミだから今のキミが知ってるはずなかった」 「もう少しマシな嘘つけないの?」 「いや、本当だって。10年後のキミと10年後の水族館に。まぁ厳密には9年5か月後くらいかな」 「……10年後も二人でデートなの? 子供がいたりはしないの?」 「子供は両親に預けてある。結婚してもたまには二人でデートしようって約束したからね」 「ふーん。でもさ、たとえそれが10年後の私であってもそれは別の女とデートしたことには変わりないんじゃない?」 「それは大丈夫。僕も10年後の僕だったし」 「へぇ。つまり10年後のあなたと10年後の私が10年後の水族館に……あれ? 10年後の私たちが行く10年後の水族館は20年後の水族館じゃない?」 「ん? あ、ほんとだ。そっかあの水族館は20年後だったのか。じゃああの変なアイスも20年後の変なアイスだったわけだ」 「それだとその変なアイスは40年後の変なアイスだよね」 「確かにそうなるね」 「40年後の変なアイス食べてみたいな」 「40年待てば食べられるよ」 「でも10年後のあなたと私はもう食べてるんでしょ。それってずるくない?」 「確かに。でも10年後の僕たちは20年前の変なアイスはもう食べられないからね」 「それは私たちも食べられないよね」 「実家の冷蔵庫とか探せばあるんじゃない?」 「あるかなぁ。それよりも私は10年前のあなたとデートしたいなぁ」 「10年前って中学生だけど」 「それがいいんじゃん」 「ああでも、今から準備したら早ければ15年後くらいのキミは10年前の僕とデートできるかもね」 「え? ああうん。そうか。あるいは10年前の私と15年後のあなたがデートすることになるかもしれないけど」 「してくれるかなぁ」 「10年前の私は結構面食いだからなぁ」 「今は違うの?」 「今はそうだなぁ。嘘つかないで素直に謝れる人がいいかな」 「元カノと間違えましたごめんなさい」 「他に嘘はない?」 「ないよ」 「よろしい」
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