親愛なるリアルタイム・シンガーソングライターへの手紙

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私はあなたへ、ありがとうの気持ちを伝えたいです。 「芯のあるプライドさえあれば、闇を写すルポルタージュみたいなどんな生きづらい世の中でも、きっと晴れて虹が出る」 忘れてしまいそうなほどシンプルな生き方を、唄い続けてくれるあなたへ。 アクションスターや魔法使いもいないロードムービーのような穏やかな毎日にも、眩しい光の破片は散りばめられている。あなたが教えてくれるそんな小さな幸せを、もし自分も誰かにあげられていたなら、自分の産まれた理由(わけ)もそこにあったりするのかな、と、最近は思えたりするのです。 毎年賑やかに聴こえていた色とりどりの“さくらのうた”を今年は仲間と唄うこともできなかった。そんな寂しい春にあってもあなたは笑って、明日はきっといい日になると唄い続けてくれた。あなたと私はまるで、明るく照らす太陽と花開こうとする蕾。そんな繋がりを感じて、私は本当に救われました。 私が旅人のように歩き続けてもきっと世界を救うパイオニアになれはしないけれど、もっと身近な、同じ空の下にいる友が人知れず悩み多きサイレントマジョリティーだとしたら、その友だけでも、自分がこの手で救いたいと思います。悩める友にもきっといつか陽はまた昇ると思ってほしい。そのためにまずは自分が弱気な自分から卒業したい。あなたのおかげで、私はそう思えるようになりました。 誰もいない台所で一人分の食事を前にふと、何のために生きるのだろう、なんて不安に(さいな)まれる時もあります。 それでも、左胸の鼓動をその()に例えて「誰がために鐘は鳴る」と唄い、「自由に羽ばたく少年であれ」「福笑いを囲む団欒のように笑顔でいることに愚直であれ」と唄い続けてくれるあなたのことを想い出せば、自分にも人にも優しくなれる気がするし、そうでありたいと思えます。 それはきっと私だけでなく、この世界を生きる多くの現実という名の怪物と戦う者たちの、ほんとのきもちなんだと思います。 あなたが十年前にその一歩を踏み出してくれたから、あなたが十年間その声で唄い続けてきてくれたから、いま私には愛すべき、素晴らしき日常があります。唄い続けていてくれて本当にありがとう。 嘆きや笑顔も、憂いや幸せも、愛や希望も、どんな事でも、あなたがその時「いま」思った事を「いま」唄う、あなたの思うままのリアルタイム・シンガーソングライターでいてください。 十年前のあなたと その十年後の今のあなたと この十年先も唄い続けるあなたへ、 愛を込めて。
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