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また、そうして長々と付き合っている間も、実に色々な事があった。
当時、何故か女子から人気があった私は、誰かに話しかける度に、そんな光景を見かけて嫉妬していた彼女に、それはもう、しょっちゅう怒られていたのだ。
あの頃は私も若くて、他の女子とは何の関係もないと、ただ授業で理解らなかった部分や、疑問に思った点を話していただけだと、彼女が子供のように機嫌を損ねるごとに、必死で言い訳をしたものだと思わず一人吹き出してしまう。
甘酸っぱい青春時代の思い出を、実は妻以上に大事にしていると知れたら、きっと笑われてしまうだろうな。
書物だけを本棚に戻し、椅子に座り直して手紙を机に置く。
封筒は年月を重ね、空気に触れていた事による劣化で少し黄ばんでいたが、私にとっては、あの頃の白と何ら変わらない。
そこには妻が何歳になろうと、今でも変わらず私を想ってくれる、ありったけの気持ちが詰まっているのだ。
もう何年も読んでいなかったというのに、否、だからこそなのだろうか。
封筒をゆっくりと開き、逸る気持ちを抑えて便箋を抜き出したあの頃の、何とも言えない感情がふつふつと沸き上がってきた。
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