十年後の君へ

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十年後の君へ。 今、私は元気にしているでしょうか? ……そんなことわからないよね。 これを読む頃、きっと私はもう亡くなった人だと思うから…。 願わくば、天国で楽しく暮らしつつ、君の成長ぶりを陰ながら見守れていれば嬉しいかな。 お父さんに、十年後…君が二十歳になる時、この手紙を渡してほしいと頼んでたんだけど、ちゃんと二十歳の君に届いたかな? お父さん、しっかりしてるんだけど、ちょっと抜けてるところがあるので心配です。 君も私に似て優しいんだけど、お父さんに似ておっちょこちょいなところがあるから……。 二人を残して旅立たなければいけない…。 しきれない心配と、君の成長を身近で見れない心残りで泣きたくなったりしています。 でも、泣いたところでどうにもならないので、今までの楽しかった事をケータイの写真を見ながら思い返すのが、最近の楽しみです。 もちろん、お見舞に来てくれるお父さんと君と過ごす時間も、私にとってかけがえのないものですよ。 ……今日は、もうすぐ宣告された余命がきてしまうので、その時が来る前に想いを伝えなきゃと手紙を書きました。 君にとって、私はいい母でしたか? 私なりにがむしゃらにがんばってたけど、母親なんて初めての経験ばかりで……。 育ててくれた自分の母親には感謝する日々でした。 大変だと思うことも多かったけど、それ以上に君からはたくさんのことを教えてもらいました。 まずは、君のお母さんになれたことに感謝。 時々風邪ひいたり、ひざ小僧にすり傷つくってたけど、君が健康で元気でいてくれてることに感謝。 私をお母さんと呼んでくれることに感謝。 そして、一緒にたくさん笑ったことに感謝。 世界一大切で、大好きだよ。 あーあ。 君の結婚式で、「おめでとう」って言いながら、ぼろぼろ泣くのが夢だったのにな…。 君より先に旅立ってしまう事を許してください。 私がいなくなっても、お父さんと仲良くしてね。 なんたって、二人とも肝心な時に抜けてるんだから。 君とお父さん、二人に出会えて幸せでした。 これからも元気で頑張ってください。 素晴らしい明日が来ますように……。 十年後の君へ。 十年前の母より。
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