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「あの花嫁の顔は傑作だったな」
「10年前にいじめて自殺させた子が、過去からやってきて悪事を暴露、なんてのは予想するまい。恐ろしい『10年後のあなたへのメッセージ』だよ」
「これで婚約破棄。玉の輿目前だったのに可哀そうなこって。わが社の未来も変わるな」
「あの女に滅茶苦茶にされた未来が変わる。お前はタイムマシンを発明した大天才だってのにリストラ」
「お前は過労死寸前。全部あの女が社長になったせいだ。未来が楽しみだな」
「いじめられてたあの子、結局死んじゃうのかな」
「さあ。まあ中学生の女の子一人が死のうが生きようが、そこまで未来は変わらないだろう」
「だな。さ、戻ろうぜ。現在2010年から――」
「待ってくれ。エラーが出てて、2040年に戻れない」
「どういうことだ? エラー表示は」
『NOT FOUND』
「2035年は?」
「そこなら戻れる。でも、過去の自分がいる年代に長居はできないんだろう」
「2035年の情報にアクセスしよう。『A国崩壊。R国と戦争激化、新型化学爆弾を使用か。開発者は』」
「あの女の子だ!」
「我々はとんでもない科学者に命を与えてしまったらしいな」
「言ってる場合か! あの子に開発を止めてもらわなきゃ」
「我々が説得したところで25年後の彼女が科学者になっていないとは限らないぞ」
「俺の復讐で未来が消えるなんて嫌だ!」
「おい!……ああ、足が速い! あと15分で戻らなきゃいけないのに、何ができるって言うんだ。2039、2038年もダメ。2030年は戻れるがそりゃそうだ、私がタイムマシンを発明したのがこの年だからな。滅亡までにタイムマシンを発明できていたのは良かったが2040年に戻れなければ、結局私たちは消えてしまう!」
「お待たせ」
「何しに行ったんだ! 取り合えず30年にタイムスリップして、10年前の私にこの話をしなきゃならん」
「その前に2040年を試してみてくれ」
「設定できる! どんなカラクリを?」
「未来に戻りながら話すよ、急いで」
「あ、ああ。タイムワープ開始!」
「十年後、とびっきりのいい女になって社長の前に現れるようにって言ったのさ」
「あの子が社長夫人になるわけだ」
「ところで話してなかったけど、俺あの女の子供なんだ」
2040年に戻った私は稀代の科学者としての地位を手に入れていた。代わりに友人を永遠に一人失った。10年前の私に『復讐は止めろ』と伝えるかどうか、私は永遠に迷い続けるだろう。
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