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「ええ、ええ。それはもちろん心得ております。けれど、日本中の先生のファンは先生の新作を望んでいて……」
事務所のスタッフからだった。
適当に返事をして、電話を切った。
私は今、映画監督だ。
撮る作品、撮る作品がヒットしたけれど、なんだかむなしくなってしまい、休暇をもらった。
いろいろと考えてみたけれど、このままではいい方向に向かわない気がする。留学をして、自分の見識を広げようかと本気で思っている。日本では有名人でも、海外では無名なただの女性だ。
ふと思いたち、机に向かって、私は手紙を書き始めた。
「せっかく、過去の私から手紙がきたのだものね」
冒頭に「10年後の私へ」と書いた。
「10年後の私へ
私は今、日本で映画監督をしています。
でも、監督を辞めて、留学をしようかと考えています。
今、私は外国で、普通の一般人になって、暮らしていますか?」
さて、どうなるんだろう。
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