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「あ、春潮師匠、傘を忘れてる。山田君今なら間に合うからちょっと追いかけて」
「ええ……」
仕方がないので嫌々ながらも傘を持って店を出ると、春潮は傘を忘れたことに気づいたらしく戻ってきていた。
「おうすまねえな兄ちゃん、この雨だってのに傘を置き忘れちまってよ。いやしかしこの強さならまだまだ雨はやみそうにねえな。やっぱり雨は俺の味方だ。面白え落語のイメージがいくらでも湧いてくるぜ。じゃあな!」
雨に唄えばの鼻歌をふりまきながら去っていく春潮の背中を見送りながら、山田君が空を見上げて、手のひらを出した。雨はやんでいた。
「やっぱりヤバイやつじゃねえか」
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