真昼の星はなぜ見えないのか。

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「相良」  二回目の会話は俺からだった。さすがに窓際でなくなった席に座る彼女に声を掛ける。予想通り相良の返事は小さくて、教室の喧騒にかき消されてしまいそうだった。 「グループ学習のやつ、プリントにまとめてくれてただろ。職員室寄るから提出しとくよ」  一つの議題に対して四、五人で議論を交わすグループ学習。俺と相良は出席番号が近いおかげで同じグループになった。メンバーが集まって、珍しく相良が真っ先に声を発したかと思えば、書記に名乗りを上げた。そうすれば大して意見を出さなくても免除される風潮があったせいだろう、それが人とコミュニケーションを極端に減らした彼女なりの生きる術らしい。メンバーの誰も反対しなかったし、黙々と意見をプリント一枚に丁寧にまとめていくのを見て、むしろ適任だと思った。  代わりに提出する、と俺が言ったのはただの気まぐれだったと思う。急ぎではないものの、実際に職員室には用事があった。 「まだ……えっと、もう少し。まだ、まとまってなくて。あ、自分で行く、から……大丈夫」 「は?」  聞き返したのは、声が小さくて聞き取り辛かったからではない。何ヶ月も一緒のクラスだったのにあまりに他人行儀な態度に驚いたからだ。彼女の目はふらふらと泳ぎ、机の上で右手で左手をぎゅうと握っている。  なんで俺と話すのにそんなよそよそしいんだ。なんで緊張してるんだ。俺の言い方が悪かったのか、俺の目つきが悪いせいか。疑問と反省が交ざり、妙な間が俺と相良の間に流れる。出方を伺うように相良は口を噤んで、相変わらず目を伏せていた。
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