そうだ、ガラケーだった

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私の声に反応するかのように、20歳私は話しかけてきた。 「ちょっとめっちゃ胸元しかみえないんですけど~。顔見たいです~」 そうか、10年前の私はガラケーだった。 だからこんな昔のテレビを今映すみたいな、画面の小ささなんだ。 それよりもっと小さいけど。 「わかった、まって、2メートル、2メートル離れるから!!」 テーブルのスマホから2メートル椅子を離して、座る。 「どう?見える?」 「見えま~す。てか、スーツ?顔疲れてない?めっちゃウケるんだけど」 ニヤニヤして笑う20歳私。 あれ、昔の私、こんなチャラかったっけ? 「ちょっと!!もう20歳なんだから、ちゃんとした敬語使いなさい!あと語尾は伸ばさない!わかった?」 「は~~い」 「ってわかってない!!そんなんだから、ノリの良さだけで変な会社の営業にしか受かんなかったんだよ!もっと勉強して、まともに周りの就活している子の真似をして・・・」 「え、ウザ。ごめん、ほんとは9時からのドラマ観たいから、切っていい?今うち録画壊れててさ~」 「あ、そうだ、この時期壊れてたね。なつかし~」 「じゃ。お達者で~~」 ブツッ。 画面は真っ暗になった。 1人うなだれる私。 あー。 ・・・なんで最後だけじいさんみたいな挨拶なんだよ。 <完>
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