You've got mail

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 日当たりの悪い部屋。西日が際立つこの部屋でオレは、クローゼットの中から1枚の手紙を見つけた。  当時12歳。覚えたての漢字やミミズのような平仮名が躍る。 「10年後の自分へ。元気ですか?彼女はいますか?ゆうめい人になれましたか?友達はいますか?勉強頑張っていますか?」  小学校の授業で書いたやつだ。質問攻めでウケる。でも自分だっていう事がよく分かる文だ。  彼女はできたけど別れちまった。それでも1年はもったんだぜ。  友達もできた。進学と同時に切れた縁もあるけど、親友って呼べる奴らもできた。もちろん今もそいつらとは続いてる。  でも夢は……。  高1のはじめに両親が離婚して、オレは母さんの方についていくことになった。高校は何とか卒業できたけど、これ以上母さんに苦労させたくなくて、すぐに仕事に就いたんだ。  野球選手になる夢も、そこで途絶えた……。  高校をギリ卒業できたくらいのオレの頭だから、苦労の連続。上司には怒られ、先輩には舐められ、でも母さんには楽させてやりたくて黙ってた。  そしたらある日突然、急に親父が金をせびりにやって来た。母さんは昔のよしみで一度貸したんだけど、それを良い事に何度も来るようになった。どうやらヤバい奴らとつるむようになってたらしい。  オレや母さんに暴力まで振るうからついカッとなってね。包丁を抜いたんだけど、母さんの顔が目に入って外したわ。なんだかやりきれなくなってさ、思わず自分の手首切ってた。  そしたらあいつ、血見て逃げ出してね。それ以降来なくなった。やっぱ腰抜けだわ。  大丈夫、切ったのはその1度だけだから。母さんが大泣きしたのもその1度だけ。  10年。ホントいろいろなことがあったわ。あった、本当に……。    おっと迎えだ。もう行かなきゃ。そうそう、言い忘れてたことが1つ。  夢のこと――。  夢は、夢だけは、諦めなかった。母さんのためにも、自分のためにも。  昔さ、父さんと母さんと3人で東京ドーム行ったろ?そう、野球の試合。落っこちそうな斜面に椅子があって、怖かったけど楽しかった。  あそこでさ、今日、待ってる人がいるんだ。さっき言った親友たち。それと、オレたちを見に来る人達。  野球の方じゃない。歌だよ、歌。もう1つの夢。  そう、こっちは叶ったんだ。  だからさ、これからいろいろあると思うけど、負けんなよ。負けなきゃ良い事絶対あっからさ。オレが証明したんだから絶対だよ。  そっからの10年、頑張れよ、オレ。
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