(5)甘い生活

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(5)甘い生活

オレと先輩の甘々生活が始まった。 オレは週末になると先輩のマンションに押しかける。 そして先輩と甘い時間を過ごした。 オレの愛称は、宮川から和希に昇格した。 一方、先輩は先輩のまま。 先輩は「春信って呼べよ」と言うけど、そのまま先輩と呼ばさせてもらう事にした。 照れもあるけど、やっぱり先輩は先輩だ。 家に引き籠り一日中裸で過ごした事もある。 気が付けば、唇を合わせ、そして互いの体を隅々まで愛撫。 何度も何度も繋がり果てた。 天気が良ければドライブに出かける。 浜辺を男同士、手を繋いで歩いたりもした。 しかし流石にそういう光景は目立つもの。 周りからの視線が痛いほど集まる。 オレは、先輩に声を掛けた。 「先輩、オレ達注目を浴びてますよ」 「和希は、恥ずかしいのか?」 「いいえ、全然。見せつけたいぐらいですよ」 「あはは。俺もだ。でも、こうしたらどうする?」 先輩は突然、顎クイでオレを抱き寄せる。 オレは動揺して答えた。 「さ、さすがにここでは……まずいです。人目がありますから」 「ふっ、じゃあ俺の勝ちだな」 先輩はそう言うと、オレの前髪を持ち上げて額にチュッ、っとキスをした。 オレは、呆気に取られて先輩の顔を見る。 「なんだ、和希。唇がよかったっていう顔をしているぞ?」 「な、そんなこと……」 オレは恥ずかしくなってうつむいた。 図星だったからだ。 「あははは。和希。車に戻ろう。そして、車でどうだ? いいだろ?」 「……ったく、先輩はすぐそうなんだから」 オレは繋いだ手を恋人結びにつなぎ直してギュッと握った。 食事に洗濯、掃除はオレの仕事。 先輩は、洗濯物は溜めまくるし、部屋は散らかしたい放題。 初めて先輩の家に行った時はびっくりしたものだ。 「先輩、会社では完璧なのに……どうして、家ではこうなんですか?」 「ははは。面目ない」 照れ笑いする先輩。 「褒めてないですよ。せめて、食べ物はちゃんとしたものを取ってください。体が心配です」 「……しかしなぁ」 オレは、はぁ、と大きなため息をついた。 おそらく炊事洗濯はミユさんがしていたのだろう。 きっと食事は、外食やコンビニ弁当に違いない。 オレは先輩を連れ出して、近くのスーパーに買い出しに行った。 オレはカートを押しながら先輩に言った。 「先輩、なにか食べたいものあります?」 「そうだな……卵料理、すっぽんにウナギってとこか?」 「へっ? なんですか、その組み合わせ」 「ははは。精が付くものさ。和希には今夜頑張ってもらわないとだからな」 先輩は、満面の笑みでウインクする。 「ぶっ。いいですよ。そんな気遣い……」 「さすが、和希。お前、最高に元気だからな……ふふふ、俺は何でもいい。和希が食べたいものにしろよ」 「じゃあ、肉野菜炒めにします。いいですよね?」 「おお、それで頼むよ」 先輩はカートを押すオレの手にそっと手を重ねた。 「せ、先輩。手……」 「ああ、ごめん。嫌だったか?」 「嫌じゃないですけど……今時、新婚だってこんなスーパーでいちゃいちゃしませんよ……」 「いいじゃないか。俺が甘えたいんだよ。悪いか……」 先輩は、照れ隠しなのか目を逸らして言った。 ちょっと、頬が赤い。 こんな先輩も可愛くて胸がキュンとしちゃう。 オレは、それに気が付かないふりをして、 「先輩……わかりました。じゃあ、今だけですよ」 と言うと、先輩の手に指を絡めて重ね直した。 その日の晩飯は大絶賛。 「美味いよ。この野菜炒め。お代わりな」 「よかったです。はい。ご飯」 オレは山盛りにしたお茶碗を先輩に差し出す。 先輩は、ご飯を頬張りながら言った。 「なぁ、和希。お前はすごいな。家事は全部できて、飯もこんなにうまい。いっその事、俺の嫁になれよ」 「ぶっ……なんですかそれ。プロポーズっすか?」 「そう思ってもらってもいいぜ。それにしても美味い」 「……その、先輩こそ。オレの嫁になりませんか?」 「ん? どう違うんだ? お前の嫁って」 「いや、その……先輩って、可愛くてオレの理想の奥さんだから」 「奥さんねぇ。俺は何もできない奥さんだけど、それでいいならいいぜ」 「はい! もちろん、それでいいです!」 オレは嬉しくなって声を張り上げた。 「じゃあ、またお代わり頼むぜ。あなた!」 「……あの。そうやって茶化すのやめてください……」 オレはガックリと肩を落とした。 また、先輩の本気めいた冗談。 まぁ、こんなご飯中に本気のプロポーズなんてあろうはずも無いわけだが……。 それでも先輩は、手を頭の後ろにおいて言った。 「あはは。ごめん、ごめん。ついな、お前の膨れっ面、結構可愛いからさ」 「先輩!」 オレは思いっきり先輩をにらむのだけど、先輩の嬉しそうな笑みでつい、ぷっ、っと吹き出してしまうのだった。 先輩の家のベッドは大きくて、二人寝ころんでも十分な大きさ。 オレと先輩は果てた後、きまって手を繋ぎながらまどろみを楽しむ。 快楽の果てに湧き上がる温かい感覚。 心地が良くて、心が癒される。なんとも堪らないひと時。 オレは思わずつぶやく。 「先輩、オレ、幸せっす」 「それは、俺もだ。しかし、俺だけ、こんなに幸せでいいのかと思う時がある……」 「……それは一体」 オレの疑問に先輩は笑って答えた。 「ははは。なんでもない。忘れてくれ……それより、和希。今夜は朝までいいか? 次の週末までお前を我慢できるように」 「はい! オレも先輩の事を体に焼き付けたいです!」 オレと先輩は見つめ合いながら熱いキス。 そして、再び二人の体が重なる。 オレのペニスが先輩のアナルにすっぽりと収まると、先輩は頬を染めながら言った。 「さぁ、来てくれ……いつもの頼む。和希」 「はい。先輩」 オレは、腰を振りながら、先輩の首筋、乳首、そしてペニスのすべてを愛撫し、先輩を快楽へと誘う。 気持ちよくて声を上げてよがる先輩。 オレも、気持ちがよくて、自然と声がでていく。 そんな営みの中、オレは先ほどの事を思い浮かべていた。 そうか、先輩はまだミユさんの事を……。 それは薄々気が付いていた。 そう、先輩の家には、一か所だけオレが踏み込めない領域がある。 ミユさんの部屋。 何一つ手付かずのまま時が止まった空間。 そこの中に先輩の心の一部もまだ仕舞ってあるのだ。 だから、ミユさんがいるこの家では同棲はできない。 週末婚止まり、って事なんだ。 オレは、先輩の脚を持ち上げながら思いっきり突き上げる。 先輩は、体をビクビク小刻みに痙攣させ、それがオレのペニスに快感となって伝わってくる。 「はぁ、はぁ、先輩、先輩、オレいきそうです」 「うっ、うっ、俺もだ……奥まで、奥までたのむ……」 オレはさらに、ぐりぐりと腰を回しながら、大きく腰を突き上げた。 「うっ……先輩……」 「和希、いくっ……あーっ……」 先輩の絶頂の叫び。 先輩は、半目のまま、背筋をしならせ、ガクガクっと体を震わせた。 そして、幸せそうな微笑みを浮かべたまま、気を失ったように目を閉じた。 オレのぺニスの先からはドクッ、ドクッ、っと精子が発射され続ける。 まるで、先輩のすべてを愛で満たそうとするように……。 オレは、先輩の体の上にそっと手を添えた。 汗ばんで火照った体が温かい。 先輩は、オレに撫でられていることに気が付き薄目を開けた。 「和希、最高に良かったぞ……」 そう一言だけ言うと、また目を閉じて快楽の園に戻って行った。 オレは、その先輩の幸せそうな表情を愛おしく見つめる。 オレでは役不足かもしれないけど、少しでも先輩の救いになりたい。 いつかきっと、ミユさんの事を吹っ切らせてあげたい。 そして、オレだけで先輩を満たしたい……。 そう思っていた。
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