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「わかった。だけど雨、本当にやまないね。ドシャブリの中、帰るの嫌だな」
本当にこのまま、朝まで美雨と一緒にいられたなら。
「雨、どんどん降ればいいのに。もっともっとたくさん降って、洪水になって、遥希くんはおうちに帰れなくなっちゃっうの。美雨、遥希くんとノアの方舟に乗りたいなぁ」
「いいね、それ。ロマンがあるな。あ、そういえば、ノアの方舟って本当にあったらしいね」
「え? それって、おとぎ話じゃないの?」
「旧約聖書の物語だろう。実際にノアの方舟の木片が発見されたらしいよ。トルコのアララト山の山頂でさ」
「そうなの ⁉︎ ふーん、なんだかよくわからないけど、ロマンチック〜 ノアの方舟に乗って、遥希くんと一緒にゆらゆら揺られたいなぁ。それでね、どこまでもどこまでも、だーれも知らないところへ行くの」
「……美雨」
美雨が僕の首に腕を巻きつけ、胸に耳をあてた。
「ドックン、ドックンしてる。美雨はね、遥希くんの胸の音が好き。朝までずっと聴いていたい」
美雨の背中に腕をまわし、きつく抱きしめた。
美雨がみている夢は僕の夢だ。
僕も一緒に夢をみていたいんだ。
美雨が今みている夢を。
現実の世界から逃げだしたいのさ、僕は。
絶え間なく降り続く雨の音は激しさを増していた。
本当にこの雨で、何もかも君と一緒に流されてしまえたなら。
ーENDー
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